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初めての岩場ツアー in 四国 前編

土谷2019/03/05

出発の朝

2018年12月30日午前4時。まだあたりは真っ暗。雪が降り注ぐ中車に荷物を詰め込む。初めての岩場ツアーに期待をふくらませ滋賀を後にした。まだ朝早く高知までは5時間はかかる。仮眠をとろうと思ったがしばらくしてある異変に気付いた。暖房が効いてない?なんとチーフの車はエアコン故障中という悲しい事実を知ってしまった。外気温とほぼ変わらないキンキンに冷えた車で高知を目指すという悲劇からこのツアーは幕を開けた。

日御子 火消し岩

車を走らせることおよそ5時間。目的地である最初のエリア日御子に到着。車をとめたとこから5分ほど歩いたとこに岩場があるのでアプローチも楽々。林の中にそびえ立つ巨大な岩、岩の名前は“火消し岩”。高さは約5mほどあり中々のスケール感。いつも通りドクターエアでしっかり全身を解してからストレッチ。大量のマットを敷きさっそく課題にとりつく。

最初の課題は“炎”(初段)。右面の中央を直上するラインでやや傾斜もある。ホールドの持ち感を確かめながら一手ずつ確実に進める。体の感覚も良く、慣れないマントルも落ち着いて処理出来た。最初のトライで完登。ただ登れたことだけでなくトレーニングの手応えを感じるいい内容だった。

纏 自身初の二段

次は“纏”(2段)に挑戦。岩の一番奥からスタートしルーフを抜けて右上する。最初に登った炎へと繋げるラインで全部で20手以上はあり、おそらくこの岩で一番長い課題だ。岩場でここまで長い課題は初めてでどこまで通用するのか全く想像出来なかった。数回トライを重ねムーブを固める。この課題最大の核心は持久力。何度もイメージを繰り返し下から繋げる。ルーフを抜け最初のレストポイントで呼吸を整える。レストを重ねながら一手ずつ進め、リップまであと一手。左足に重心を預け手を出そうとした瞬間右手がすっぽ抜けた。一瞬のヒヤッとしたがかじかむ指先を首で温め気持ちを落ち着かせた。何とか完登しホッとひと息。反省点はあるがとりあえず自身初の二段が登れたことは素直に嬉しかった。初日からいい感じだ。

黒潮ボルダー 最高のロケーションと最高の岩

四国ツアー2日目。初日にしてツアー目標であった“グレード更新”を達成してやや浮かれ気味。昨日の疲れなど忘れてしまうぐらい早く次の岩場に行きたくてワクワクしていた。

高知市内のホテルから車で約1時間半。本日の最初のお目当は黒潮ボルダーの超有名課題“松風”。春野漁港のすぐ近くの岩のてっぺんに一本の松の木が見える。その松の木目指して直上するラインが“松風”。とても美しい課題だと思った。さざ波の心地良い音を聞きながらいざトライ。核心の一手は繊細かつダイナミック。数トライを要したが何とか完登しこの岩の上に立つことが出来た。清々しい気持ち、これだからクライミングはやめられないと心底思った。

その名は明神丸

まだ松風の余韻が冷めやまぬまま次なる目的地、土佐白浜エリアへと向かう。車を停めほんの数分で岩場に到着。黒潮ボルダーは海沿いということもあってアプローチがかなり楽なのも嬉しいポイント。堤防を降りると突如現れる天を突くようなシルエット。その岩の名は“明神丸”。これまで見てきた岩の中でも群を抜く圧倒的なカッコ良さで見た瞬間に気持ちが高揚した。初段〜四段までありグレードも幅広くどのラインも魅力的だ。挑戦するのは“藁焼きタタキ(二段)”。下からスタートし激しい傾斜を抜けて右上するライン。実際に取り付いてみるとかなりの傾斜を感じる。ルーフを抜けてからはクリンピーなホールドが続き足置きも繊細。最後のリップをとめる一手はダイナミックで様々な要素が求められる課題だ。ルーフを抜けてからのカチ取りが中々定まらず苦戦を強いられていた。トライを重ね疲労もピークに。この課題は自分には厳しいのか。心が折れかけた。そんな中チーフが左膝を痛めながらも“落葉(三段)”に果敢に打ち込む姿に勇気づけられた。日も暮れてきて次がラストトライ。頭のイメージを固める。もうルーフのムーブは自動化されていてあっという間に核心の一手まできた、左足のヒールに体を預け手を伸ばす。ピンポイントで手が止まる。その瞬間に絶対に決める!と全身に力が入った。リップを止めると同時に無意識に声が出た。ゆっくりと手を進め岩の頂点に。その時の夕焼けは大袈裟ではなくいつもと違って見え、僕にとって忘れられないものとなった。おそらくこのツアーで最も打ち込んだ課題で達成感は格別だった。沈み行く夕日を眺めながらまたここに戻って来たいと心から思った。

後編に続く...

土谷2019/03/05

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